レインボーのクロノマスター スポーツをLVMH Watch Weekで発表──ゼニスは虹色の輝きを目指す
その技術力で時計通たちから長く称賛されてきた、スイスの名門ゼニス。しかし今や、大胆な新作でより多くの層にアピールしようとしている。
レインボーのクロノマスター スポーツをLVMH Watch Weekで発表──ゼニスは虹色の輝きを目指す
ゼニスは高級感と華やかな魅力を備えたブランドへと進化しようとしている。「クロノマスター スポーツ レインボー」は、時計メーカーとしての新たな方向性を示すだけでなく、業界全体の流れ──技術革新よりも華やかさを重視するトレンド──をも象徴する。
ここ数年、ゼニスは新しいレインボーへと続く道筋を少しずつ築いてきた。スチール製の「クロノマスター スポーツ」の後にソリッドゴールドモデル、昨年にはサファイア、ダイヤモンド、スピネルをベゼルにセットしたゴールドモデルを発表。そして今回、虹色のベゼルを持つクロノマスター レインボーへとたどり着いた。製品開発責任者であるロマン・マリエッタは、モデルの価値を高めるためのプロセスであり、クロノマスター スポーツのアイコニック性を引き上げる手段と説明した。確かに52個のサファイアがセットされたデザインは、時計愛好家を魅了した2012年のロレックス デイトナ レインボーを彷彿とさせるもので、ゼニスにとって、ピラミッドの頂点となる。
さらなる高級化を目指すゼニスは、現在年間2万本ほどの生産数を減らす方針だという。「よりプレステージ性の高いモデルに注力する」とマリエッタは語り、その一例が、11万2100ドル（約1700万円）のレインボーだと加えた。
2023年、ゼニスはVIP顧客向けのオーダーメイドプログラムを導入した。日本の顧客が「できる限り多くのダイヤモンドをセットしてほしい」と依頼した結果、ケースからブレスレットまでがダイヤモンドで覆われた、世界にひとつだけのローズゴールド製クロノマスター レインボーが誕生したのである。ゼニスの新たな方向性は、時計業界全体のトレンドとも密接にリンクするものだ。というのも、ここ数年、デザインや華やかさを重視し、一方でムーブメントのキャリバー名や精度にこだわらない、新たな愛好家が増えているのだ。
「確かにその流れを感じる」とマリエッタも語る。ゼニスは1969年に自動巻きクロノグラフの「エル・プリメロ」で時計史に名前を残したが、そういった知識がなくても、レインボーにセットされた5.36カラットの貴石に魅了される人はいるだろう。さらに、スイス時計業界全体で販売の減少傾向が見られる中、ゼニスのようなブランドは最上位の顧客─つまりレインボーを手に入れたいと願う顧客─に焦点を絞ることによって、この困難な状況を乗り越えようとしている。
時計イベントでクロノマスターを見かけるたびに嬉しくなる私だが、ゼニスがフラッグシップモデルを新たな輝きで発信する様を見ると、いっそう心が躍ってしまう。偉大なスポーツウォッチの殿堂への道は、結局のところ、金とダイヤモンドで舗装されているのだ。クロノマスター レインボーは、時計史に大きな進歩をもたらしたムーブメントを今も搭載している──ただし、はるかに華やかなパッケージに包まれて。
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